日本国として如何ほどの、防衛力を保持すれば良いかという議論は、昔から随分となされて来ました。しかしながら、これは極めて難しい問題であり、納得する結論は得られて来なかったというのが、現実ではなかったかと思います。日本という国をパーフェクトに守ろうと思えば、その費用は、国家財政が破綻するほどのものとなりましょうし、誰(何処の国)がどのように攻めてくるのか、それに応じて、わが国はどの程度までの犠牲を覚悟して防衛力を整備するのか等、日米関係を含め極めて難しい、政治的にセンシティーブな根本的な問題について議論をしなくてはならないからです。
これらのことはさておき、昭和25年朝鮮戦争をきっかけに急遽、警察予備隊として創設され、それ以来約50年の歴史を経て整備された現在の自衛隊の姿を俯瞰してみたいと思います。そこには、諸外国の軍隊に比べかなり特色のある姿が浮かんでまいります。紙面の関係で、詳細なデータに基づく記述にはなりませんが、その代表例として今日は、防衛予算の額と自衛隊の実力との乖離ということについて触れてみたいと思います。
日本の防衛予算は、約5兆円です。これをドルに換算したり、当該国の通貨に換算して予算の比較をすると、日本は、自由世界では米国に次ぐ位の順位になります。これをもって、わが国を防衛することに批判的な人達は、わが国の防衛力は過剰であり、周辺諸国の脅威となっている、国家財政も厳しいから削減すべきであると避難してきました。
各国の軍事力を比較するときに重要なことは、その実力です。陸上自衛隊は、マンパワーすなわち人員数です。勿論、戦車の数や、大砲の数も大事な要素でありますが、基本的には兵員数です。海上自衛隊は、護衛艦等の戦闘艦艇の数即ち総トン数です。航空自衛隊は、戦闘機等の機数です。
これらの要素を基に各国の防衛力を比較しますと、予算額にほぼ匹敵する順位にあるのは海上自衛隊だけで、だいたい、一桁の後半の順位です。陸、空は、20番目以降になっています。このことをよく理解しておかなくてはならないと思います。
では、何故そうなのかということについて、諸外国の軍隊と比較して、その一端に触れておきたいと思います。
その1は、人件費の割合が非常に高いということです。防衛庁の総予算に占める人件費の割合が、陸・海・空によって違いますが、3割から4割になります。要するに、隊員の給料が高いということであります。ところが、隊員は、特別の国家公務員でありますから、わが国は、公務員の給料が高いということになります。公務員の給料は、人事院が民間と比較しながら、決めていきますので結局、わが国は他の国と比べ全体的に国民の給料が高いということになります。
その2は、装備品の価格が極めて高いということであります。わが国は、陸上自衛隊の場合は特に、ほとんどの装備品を国内生産にしていますが、防衛費の制約から年間で調達する数量が極めて限られており、大量に生産できないため、装備品の単価が極めて高いものになるのです。
例えていうならば、戦車1台ンン億円、軽装甲車1台ン千万円、ミサイル弾1発数数千万円、ロケット弾1発数百万円、大砲弾1発数十万円、等々です。
また、装備品の研究・開発・生産に当たる防衛産業の方々も、生産ラインの確保、技術者の要請・確保等に大変な苦労をされていると聞きます。
このことについては、武器輸出三原則も大いに関係しております。諸外国と同様に、他の国のニーズに応じ輸出することができれば、装備品の生産量が増え、その単価は、現行の2〜3分の1になるといわれています。
その3は、防衛施設周辺整備費といわれるものが、防衛予算の約10%もあるということです。これは、諸外国にはない、日本の大きな特色となっています。
自衛隊には欠かせない演習場の借り上げ或いは賃貸料、基地・駐屯地周辺民間等への防音工事、道路整備、漁業保障等々に要する費用です。
概ね以上のような理由から、日本の自衛隊は予算規模からいけば、世界に冠たる軍隊のように思われますが、実力は必ずしもそうではないということになっているのです。兵員数もさることながら、戦車や大砲、護衛艦、戦闘機等の数も不十分だし、これらの装備品の整備や教育訓練に充当する予算が極めて限定されるものになっているということです。
勿論これは、これまでの防衛力整備の方針に基づいて、いわゆる第二次大戦型の対渡洋上陸作戦を年頭に防衛力を整備した結果であり、今後は、その整備方針が大いに変更されると思われます。
更に付加して申し上げるならば、予備戦力の欠如も大きな特色となっています。諸外国は、現役兵員数の数倍から十数倍の予備役兵員数を保有しております。
現在、陸上自衛隊は、ゴラン高原、イラク、パキスタンに派遣されていますが、これに国内において自然災害が発生する、テロによる大災害が発生するという事態が同時に起きますと、お手上げになります。このようなときのために各国は、訓練された予備兵力を平時から確保しているのです。
わが国の陸上の予備戦力は約2万人足らずで、まさに、恥ずかしい限りではないかと思います。海・空に至っては皆無に等しい状況です。国を守るということは、一番大事なことです。しかし、そのためには、人が要ります、金がかかります、国としての決意が必要なのです。
次回は、防衛力の構築には、「長い年月がかかる」ということについて述べたいと思います。
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